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<本 編>
∴‥∵‥∴‥∵ 桃尾の滝 ∵‥∴‥∵‥∴ |
| 投稿:マーリンさん(女性・兵庫県) 執筆:雲谷斎 |
この話は私が小学校のときに、奈良に住んでいる叔母と私の家族が 夏に体験した不思議な話です。 叔母は私たちが夏休みに入ると、奈良のあちこちをよくドライブに連 れて行ってくれました。 ある日、叔母がうきうきしたような表情で言うのです。 「この前なぁ、とっても落ち着くええ場所見つけてん」 私は以前から叔母が温泉好きなのを知っていたので、 「また温泉でしょ?」と、いつものことのように尋ねました。 すると、意外にも違っていたようで、弾んだ声で続けました。 「ちゃうねん。滝! 滝やねんけど、すごい綺麗でなぁ。そやから 今日はみんなでそこへ行こう!」 叔母が勢い込んで言うので、叔母の家族と私の家族で行くことにしま した。 市街地からどんどん山の方に走っていき、かなり時間をかけて目的の 滝に着きました。 それは『桃尾の滝』という所で、確かに木々の緑と透明な水の織り なす自然がとても綺麗でした。 ……でも、なぜか気温とは違う寒気がするのです。 誰かにじぃっと見張られているような感じがして、 たまらない……。 ![]() 気持ち悪くなった私は叔母に「もう帰ろうよ!」と強く言いました。 すると、帰りのクルマで祖母が私に言いました。 「あんた、あそこの滝もう行きなや。お婆ちゃんさっきなぁ、 こけるはずがない所で、誰かに引っ張られるように後ろにこけてん。 手ついたとこを見たら……目の前にお経が書いてある石碑があってん。 お婆ちゃん、ほんまに気持ち悪ぅてなぁ」 私はその話を聞いて、やっぱり! と思いました。 でも、もう行くこともないと思い、その時はさほど気にしませんで した。 ところが、一週間くらい経ったお盆の日。 晩ごはんの後、急に叔母が「これから桃尾の滝へ行こう」とまた言い 出したのです。 叔母は自分の孫も連れて行くと言いました。 すると祖母が、 「行ったらあかん! こんな時間に連れて行ったらあかん」 と必死で止めました。 そのときの真剣な祖母の顔は今でも忘れられません。 叔母は仕方ないなという感じで「ほな、私らだけで行こうか」と言い ます。 私らとは、私と叔母、母、祖母の弟夫妻です。 はじめ弟夫妻は滝に行く気はなかったのですが、叔母が酒を飲んで いたこともあったので、代わりに運転するということで同行しました。 季節は夏でしたから、まだ周りは多少明るかったようです。 滝に着くと叔母が私の手を強く握ってきました。 そして、何かブツブツと訳のわからないことをつぶやきながら、 私を連れて滝の方に近づいていくのです。 「イヤだよそっちは。怖いよ!」と私は必死に抵抗しました。 すると何か変だと思ったらしく、母が叔母の手から引っ張って私を離 してくれました。 叔母は私をじろっと睨んだ後、一人でふらふらと滝の方に吸い寄せら れるように進んでいったんです。 その時、急に風が強く吹き、周りの木々がざわざわと不気味な音を 立て、辺りは一気に暗くなっていきました。 私たちは嫌な予感がして「おばちゃん、危ないよ!」と叫びました。 でも、必死の呼び声も聞こえない風で、叔母はどんどん水の中に 入っていきます。 私たちが声を枯らして叫ぶ度に、風がきつく吹き荒れました。 かなり滝に叔母が近づいた時、私が「おばちゃん!」と金切り声を 張り上げました。 その瞬間、叔母は滝の前でよろよろと転び、頭を岩で打ちました。 その岩を見るとお経が書かれていました。 後から叔母の娘さんから聞いたのですが、頭を打った岩というのは、 昔あの滝で自殺した人が倒れていた場所だそうです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <本編「桃尾の滝」データ> ■原作投稿者:マーリンさん(女性・兵庫県) ■2007年度 読者が選ぶランキンランキン第2位 79.25点 ('07年に発行した「逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果) 投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |