本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<本 編>






∴‥∵‥∴‥∵ 起き上がり ∵‥∴‥∵‥∴


投稿:K・Sさん(女性)
執筆:雲谷斎



   私は高校生の頃、焼肉屋でバイトをしていました。
   仕事が九時に終わり、いつものように自転車をこいで帰りました。

   いつもなら数人で帰るんですが、その日はたまたま一人でした。
   女一人の夜道は怖いものですが、帰りの道は国道で開いている店も多く、
   人通りもある賑やかな通りなのであまり気にしていませんでした。

   ところがその日に限って、クルマも人も全然いないんです。
   こんなことは初めてでした。

   「珍しい日もあるんだなぁ……」

   私はそう思いながらも少し不安になり、ペダルに力を込めました。

   やがて、ポツポツ雨が降り出しました。
   私はいっそう強くペダルを踏みました。

   「ん…………?」

   私の少し前で、お爺さんらしき人が自転車でこけたみたいで、
   ちょうど起き上がろうとしているところでした。

   私はケガをしていたら大変なので手伝ってあげようと、だんだん近づ
   いていきましたが……何か変なんです。
   おじいさんの動きが考えられないほどスローで、奇妙なんです。

   自転車を起こしながら倒れたままの姿勢で、ゆっくりゆっくりと
   スゥーッという感じで起き上がってくるのです。



   
   
まるで、ビデオのスロー逆再生のように……。



   私は恐怖を感じました。
   普通手をついたり、膝をついたりして、汚れを払いながら起きますよね。
   でも、それはそのまま元へ戻るような有り得ない動きでした。

   瞬間、これは明らかに人間じゃないと確信しました。
   私は慌ててその場を去りました。

   「あれは、筋肉マンのお爺さんなんだ。幽霊なんかじゃない!」

   自分にそう言い聞かせながら、逃げるように自転車を走らせました。

   相当走っても、やはり一台のクルマとも擦れ違いません。
   すると、向こうから人が歩いてきました。
   良かった! 私はそう思いましたが、次の瞬間凍りつきました。

   その人、歩き方が変なんです。
   両手を前にダランと下げ、口は半開き、何よりもその顔は……。
   さっきのお爺さん、その人でした。

   「見ちゃいけない!」

   そう思いながらも、つい擦れ違いざま顔を見てしまいました。

   すると、おじいさんも同時に私をギロッと見返したのです。
   その後、私は怖ろしさで、号泣しながら帰ったのを覚えています。




  
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          <本編「起き上がり」データ>

   ■原作投稿者:K・Sさん(女性)
   ■2007年度 読者が選ぶランキンランキン第3位  77.41点
   ('07年に発行した逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果)

   投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。

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