![]()

<本 編>
∴‥∵‥∴‥∵ PAのトイレ ∵‥∴‥∵‥∴ |
| 投稿:Hiさん(男性) 執筆:雲谷斎 |
免許を取ったばかりの頃の話です。 ご多聞に漏れず、私も友人とあちこちクルマで出かけて遊んでいました。 当時はまだ学生で昼間は大学、夕方から夜はバイトという毎日だった ので、クルマを走らせるのは自然と真夜中が多かったように思います。 その日は、梅雨末期特有の強い雨の降る夜でした。 いつものごとく友人二人と、あてどもなくクルマで走り出したのは 午前一時を過ぎていたと思います。 どこへ行くともなく走って、疲れるとファミレスで休んで帰るという のがパターンだったのですが、その夜は当てもなく走っているうちに ふと、銚子まで行ってみようということになりました。 頼りになるのは標識と、今通っている国道を走っていけば銚子に行け るという記憶だけです。 夜中のうえ、加えて初めての道。 おまけに強い雨で見通しも悪く、気がついたときはいつしか国道を外れ て走っていました。 どこともわからぬ道を走っていると、東関道の入口の標識が目に入って きました。 道に迷っていた私たちは救われた思いで、とりあえず東関道を走ること にしました。 まだ東関道が途中までしか開通してない頃で、平日の真夜中、しかも 強い雨の降る東関道は私たちのクルマ以外は一切走っていません。 さっきまで道に迷って沈んでいた車内も、高速を快適に走っていると、 あっという間に陽気になりました。 そんな中、どこのPAだかは覚えていませんが、目についたPAに トイレと飲み物を求めて入りました。 そこがどこのPAだか、まったく気にも留めないで入ったと思います。 PAとはいえ、真夜中ですから誰もいません。 音といえば雨が降る断続的なザーッという音だけです。 クルマ一台停まってなく、人っ子一人いない駐車場のライトに雨だけ が照らされていた光景は、なぜかいまだに鮮明に記憶に残っています。 クルマを降りると一人が真っ先にトイレに駆け込み、もう一人の友人 と私は自動販売機で飲み物を買って飲んでいました。 トイレに行った友人が戻ってきて、入れ替わりにもう一人の友人が トイレに行き、その友人が戻ってきてからも、しばらくそこで話して いたと思います。 そろそろ行こうかということになり、今度は私がトイレに行きました。 開通間もない東関道のPAですから、中は新しくきれいでした。 その甲高い笑い声が聴こえたのは、手を洗おうとしたときでした。 「イーッヒヒヒヒー!」といったら一番近いのか、とにかくお化けや妖怪が笑うマネをしろと 言われたら、誰もがするようないやーな感じの笑い声でした。 イーッヒヒヒヒーが後にくるほど強くなる感じで、気が狂ってると しか思えない笑い方でした。 声の高さからすると二、三十代の若い女性の声のようでした。 真夜中のPAのトイレに一人でいるときに、そんな笑い声が聴こえて くるのですから当然驚きました。 思わずトイレの中を見回したのを覚えています。 しかし、声は女子トイレの方から聴こえてくるような気がしたので、 あっちで誰かふざけてるのだろうと思い、それ以上たいして気にもし ないでトイレを出てクルマに向かいました。 友人二人はすでにクルマの中に入っていて、カーステの音が外に漏れ ていました。 クルマの中に入ってドアを閉めると、カーステから流れる音楽とワイ パーの規則正しい音しかしません。 私はすぐにはクルマを出さず、ほんのわずかな時間でしたがその音を 聞いていました。 「しかし、俺たちしかいないんだねぇ」 そのようなことを言ったのは私だったのか? 友人だったのか? とにかく誰かがそう言ったのを合図にクルマを走らせました。 しばらくクルマを走らせていて、ふと先ほどの変な笑い声のことを 思い出し、そのことを友人に話したのです。 「トイレに入ってたら女子トイレに変な女がいて、気味の悪い声で 笑っていてビックリしたよ」 まさか友人もその声を聴いたとは考えもしませんでしたから、 そんなことを言ったのだと思います。 すると最初にトイレに行った友人が、「その笑い声、オレも聞いた」 というのです。 二番目にトイレに行った友人は知らないと言いましたが、その話を聞い てかなり焦ったような口振りでこう言いました。 「だって、そんなわけないだろう。俺達あのPAに二、三十分ぐらい いたんだぜ。その女、この真夜中にそんなに長くトイレにいるのかよ。 それに駐車場って、このクルマしか停まってなかったんだぜ……」 そう言われて、クルマを停めたときのあのクルマ一台、人っ子一人 いない光景、さらに出発前の誰もいない駐車場の光景が思い浮かび、 首の後ろから背中にかけてスーッと冷たいものが走りました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 <本編「PAのトイレ」データ> ■原作投稿者:Hiさん(男性) ■2007年度 読者が選ぶランキンランキン第4位 76.67点 ('07年に発行した「逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果) 投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |