本当にあった怖い話・不思議な話
逢魔が時物語


<本 編>






∴‥∵‥∴‥∵ 視線の主 ∵‥∴‥∵‥∴


投稿:リキさん(女性)
執筆:雲谷斎



     いつか、逢魔が時物語に投稿したんですが、寝ているとき『コラッ!』
     という低い男の声がしたワケのわからない事件の後、私は実家に帰るこ
     とにしたんです。

     実家にはこういう話が大好きな困った姉がいるのですが、姉にそのこと
     や、それ以外にも起こった奇妙な出来事を話しました。
     ただ……ある一つの話を除いて。

     私がすべてを話し終わった後、姉は自信をもって断言しました。

     「それは夢よ。いい? 怖い夢を見たとき、人っていうのは心臓がドキ
     ドキしているでしょう。そういうとき人は夢から覚めてしまうの。で、
     まだ心臓がドキドキしているから眠れなくなったりするのよ」

     私は冷静な姉の言葉でなんだか気が楽になり、話していなかったもう一
     つの体験を話すことにしたんです。

     もう一つの体験というのは、私が眠っているとき、ふと人の強い視線を
     感じて目が覚めた、という話です。

     その視線というのは、今まで生きてきた中で感じたことのないような、
     射るような視線だったんです。
     一人暮らしなのに、この部屋に誰か人がいると感じること自体が奇妙な
     のですが、そんなことよりその視線の力に不気味さを感じていました。

     憎悪を持ってねっとり絡みつく感じというか、うまく言葉にできないの
     ですが、『殺される』といった感じの怖ろしい視線でした。

     私は恐る恐る、その視線を感じる方を見たんです。




         
知らない女が、
         
ものすごい形相で部屋の中に立っていたんです。
         

     その女は身じろぎもせずに、私をヒタと見据えていました。

     その後、私は眠ってしまったのか、気づいたらもう朝でした。
     私は当然これは悪い夢だと思っていました。

     でも、この話をした途端、姉の表情が変わったんです。
     姉は少し間をおいて話し出しました。

     「幽霊っていうものは普通に世の中にいると思うの。だけどね、幽霊が
     寝ている人を見たからって、人は普通視線なんかで目は覚めないわよ。
     目覚めるということは、その幽霊が強い気持ちでじっとあんたのことを
     見てたってことよ。

     しかも、恨みの目でね。

     それから気づいたら朝になってたって言ったでしょ? もし、それが夢
     ならさっきも話したけど目が覚めるものなの。だけど、あんたは気づい
     たら朝になってたって言ったよね。それは気絶してただけ……。
     つまり、その女の人は実際にその現場にいたってことよ」

     私は言葉が出ませんでした。

     そんな私を見て姉は続けて言いました。

     「でも、よかったわね。その女は立って見てただけなんでしょ? 
     たぶん、その人はあんたを誰かと勘違いしたんだと思う。あんたの顔を
     よく見て、違うと気づいて出て行ったのだと思うわ」

     姉の言葉に、私は少し安心したのですが、やはり不安は消えません。
     いったいあの女は何者だったんでしょう……。
     どんな恨みで、誰と間違っていたのでしょう。

     でも、それからというもの、変な音も聴かなくなりました。
     静かな生活を送れるようになったということは、もしかして、あの女が
     それまでのことと関係があったのでしょうか……?




    
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<本編「視線の主」データ>

     ■原作投稿者:リキさん(女性)
     ■2006年度 読者が選ぶランキンランキン第6位  74.50点
     ('06年に発行した逢魔が時物語」メルマガ掲載話の読者採点結果)

     投稿された話を大切にしながら、雲谷斎が加筆・執筆しました。

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